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大阪教育委員会 英語教育に風穴をあけるSuper English Teacher・・・風穴はあかない

大阪がSET(Super English Teacher)の募集を開始するというニュースが出ました。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/131112/20131112027.html
 
大阪府教育委員会が発表した募集要項
http://www.pref.osaka.jp/attach/21162/00000000/setbosyuyoukou.pdf
 
わざわざ高度な英語能力を持っている人材を募集する背景には「今いる英語教師ではちゃんとした英語を教えられない」という実情があります。一部の学校を除いて、学校の英語教育カリキュラムや教科書は全然変わっていません。やり方も進歩していません。
英語ができない教師が英語を教える先生としてまかり通るなんともおかしな状態なのです。この当たりは今も昔も変わっていません。
 
この現状に風穴をあけれる実力者を教師として迎えようとしています。
 
私は「英語ができる実力者が教えれば教育が変わる」というこの発想は問題点が3つあると思っています。
 
1.「英語の実力が高い=教える能力が高い」ではない
 
英語の能力が高い実力者の中には感覚のみで人に自分のやり方をうまく伝える能力がない人が結構います。
野球で言えば、長島茂雄です。彼は伝説のサードで守備の名手であり、バッティングも超一流でした。
 
ところが、監督になって教えるときの様が珍プレー好プレーでおもしろネタになっています。
 
長島ジェスチャーと呼ばれた「グッ〜ときてバッでやればいいんだ」というような感覚だけで教えるやり方をしても、
聞いてる選手は「?」という顔をしています。一流選手だった人がコーチとして一流かといえば、そうではないのがスポーツの世界ではよくあることです。
 
これは英語教師にも言えることです。言語能力が理屈抜きで感覚でうまくいくやり方をできる人はそれが当たり前なので、感覚でつかめない人の立場がわかりません。自分の優れた感覚(センス)頼みでうまくいった方法で教えようとするので、教えられた側にそれをつかむ能力がないと全く効果がないです。
 
巨人時代の長嶋監督のような教えられ方をしても、ジェスチャーと「グッと」「パッと」「グワーッと」だけでつかめる選手は一流の中でも稀です。
 
できないことを教えることはできないのは当たり前ですが、実力が高いからといってしっかり教えられると思い込むのは危険です。
 
教師として成り立つには「できる+それを教える術を持っている」という条件が必要です。
能力の高い人は自分が何気にやっていることを何気にできない人に教える能力を持っているかは別ということです。
 
 
2.英語の能力が高い人ほど学校教師にはなりたがらない
 
英語ができる人はほとんど学校教育には携わっていないことが多いです。
仕事をバリバリ別にこなしていたり、ビジネスに携わっている人が多いです。
 
大阪が年収700万越の給料を提示していますが、 どれだけ募集に反応があるかは正直読めません。
英語ができる人材ほど、学校教育のしがらみが大嫌いという共通点があります。
 
募集要項の中に「担任・校務分掌等を担うことがあります」とあります。
めんどくさいPTA、先生同士のやっかみ、生徒の問題。
 
英語の教育を変える業務なら、授業構想や改善に集中させることです。
 
英語を教えることに専念できるわけでもなく、問題が多いので自分の能力を高めることすらもできない職場環境。
私の同級生で英語教師経験者が何人かいますが、程度は違えど全く同じような状況でした。
 
そんな状況で指導する仕組みを作ることに専念できないで、担任やら関係ない校務をやらせようとしている。
 
教育委員会というところは「英語を指導する仕組みを作るってそんな簡単じゃない」ということがわかっていないようです。
 
私は大人の指導方法を構築するのに毎日朝から晩まであれこれ考えて、仕組みを整えてきました。
構想から実現まで6ヶ月はかかりました。
 
これを手間のかかる担任業務とか関係のない校務とかをやらせた上で改革しようなど生ぬるい。
 
 
自分が身につけた能力を発揮する分野に進むのですが、人に教える気はないというパターンが多いです。
自分で身につけた能力だから自分のために使いたいと思うのが人の心情です。
 
能力も発揮できないし、磨けない環境にいたいと思わないから、このようなSETの募集をわざわざしなければならない事態になっているわけです。
 
英語を教える気がある人材に「英語を教えること」に専念できるような待遇でない限りは厳しいと考えています。
「先生の仕事は教える以外のことが膨大」という状態に置かないことです。
 
 
3.募集をかけている教育委員会自体が英語を使用する現実に関して無知→トンチンカンな募集要項
 
募集要項の中にあった一文です。
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模擬授業(TOEFL iBT 等を活用した授業、使用言語:英語)
生徒役の面接官を相手に模擬授業を実施。授業の導入・展開・まとめを構
成し授業を行う。授業形態については、講義形式・ペア学習・グループ学習
などの複数の授業スタイルを取り入れること。
(題材例)
TOEFL iBT リーディングセクション等
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何をしたいのか全く意味がわからないw
 
4技能を磨くとは言っているものの、やろうとしてることが資格のための勉強になるか、もしくはこれまでのALTを入れてやってた授業と全然変化がないです。
 
そもそも4技能を磨く授業がどうこう言う前に英語習得の仕組みから教えるのが先でしょとツッコミどころ満載です。
 
TOEFL iBTがどうとかこうとか言う以前に「英語習得の原理原則」を教えてない生徒は授業の意図すらもわからないので、「何でこんなことしてんだ?」と思うだけです。
 
「授業でどういう風に英語を使って展開するか?」という発想では、ただの受け身の授業と化して流れていくのがオチです。
「実践」を謳った授業が成果を出せないでいるのは「やっていることが何なのか?」が分かってないことが多いからです。
 
本当にやるべきことは面接官を納得させる授業じゃありません。
これまでの英会話スクールとか資格スクールの授業と大して変化ないものが仕上がる感があります。
 
教育委員会がモノマネさせただけで終わる感じがしてならないです。
 
英語ができる人間にTOEFL iBTを元に英語の授業をやらせれば英語ができるようになるというのはおかしな発想です。
 
日本人に足りないのは「英語はどうやって身に付いていくものか?」「どういうふうに使えば、常識の違う相手にわかってもらえるか」という根本の理解です。ここが全くないまま方法に振り回されているだけです。
 
根本原因を解決せずして、英語教育が変わると考えるのはナンセンスなことです。
 
「英語を身につけることってどうなってるの?」というところから始めることです。
 
中学生や高校生はこの知識がないまま英語のできない先生の授業を受け身で聞いてるだけになっています。
変えようと思うなら、授業のやり方がどうかという以前です。
 
教育を変えようと謳ってはいるもののやってることは効果出してない英会話スクールと全く同じという何とも言えないやり方です。
 
教育委員会の偉い人。
変えるところが違いますよ〜。
 
 

 
 

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