創成館VS健大高崎の試合を甲子園で全部観ました。
健大高崎の代名詞である「起動破壊」は盗塁というイメ―ジが強いです。
しかし、健大高崎は創成館に盗塁は完全にシャットアウトされたにもかかわらず、
終盤の8回で一気に5得点を挙げて試合に勝利しました。
「起動破壊 健大高崎 勝つための走塁・盗塁93の秘策」を読んだ上で試合を振り返ると、
「起動破壊」は盗塁だけではないということが分かります。
この本の内容を一部抜粋すると・・・
現在の起動破壊は誤解されている。「機動力=盗塁」としか捉えていない。
盗塁は派手で数字にも残ってインパクトがあるが、起動破壊の真髄は数字に残らない走塁にある。
この言葉にふっと思い出したシーンがあります。
創成館は九州でも堅守のチームで知られ、春の選抜前の九州大会では少ない失点で勝ち上がっています。
途中まで盗塁は牽制できっちり阻止するなど堅実な戦いぶりでした。
しかし、天理戦と比べると、足が速いというイメージのせいか焦りというか普段しないようなミスが出ていました。
健大高崎=足が速いというイメージの刷り込みでいつもより処理を急ぎ、焦った結果のミスが出た感じです。
問題は8回の一挙5点を挙げた場面。
盗塁はゼロです。
しかし、ランナーを抱えると明らかに狙い球を絞られて連打されてしまいます。
走らせたくない→投げる球を選ぶ→そこを狙われる
つまり、健大高崎は「起動破壊」の足を封じようとする相手の意図を逆手に逆に打ち崩す能力も持ち合わせていたと思えます。
さらにエンドランをかけるタイミングと狙い球を絞るのも絶妙でした。
2番手で救援に上がった創成館のエースを一気に攻略しました。
これまで群馬大会の盗塁記録を塗り替えたり、甲子園初戦から派手に盗塁をどんどん仕掛けて成功させているのも、
単に盗塁潰しすればいいと思わせておけばいいという意図も見え隠れします。
走塁能力の向上は相手チームに脅威を与えている
走塁能力の高さの向上→盗塁成功率向上→盗塁に意識を持たせて裏をかく戦術を取る
という一連の流れができます。
走塁能力を磨き上げ、盗塁成功数を大きく数字に残すことで、相手チームに大きな心理的プレッシャーを与えるのです。
走塁能力が高い→相手の守備が焦ってミスをする→走者を抱えた投手の球を読みやすくなる
本の中で健大高崎の葛原コーチの言葉にこんなことがありました。
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起動破壊は言葉のインパクトでは、一気に木っ端微塵に吹き飛ばすイメージだが、
実際の起動破壊は「浸食」というイメージに近い。
心理戦でだんだん追い詰めていくものだ。
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盗塁によって走塁能力の高さを見せつけることでデータをベースに行う現在野球なら、
対戦相手に心理的に攻めることができるということです。
時間が経つほど、チームが徐々に崩壊し始めて、失点が増えて一気に押し切られてしまうというわけです。
創成館戦で浸食による起動破壊の攻撃力が一気に爆発したのが8回だったわけです。
徹底した走塁技術の向上がここまでチームの勝てる能力を強くしているとは正直驚きました。
シンプルで至極地味ですが、夏の甲子園ベスト8が2回。今年の2015年はベスト16。
そして、2014年は甲子園優勝の高橋光成投手を攻略して夏の大会に出場できたのも偶然ではなく、
甲子園優勝投手でさえも崩せてしまう理由があります。
健大高崎は単なる盗塁のチームじゃなかったということです。
緻密に計算された意図を持って、「起動破壊」という言葉を世に知らしめて、戦う知略のチームです。
この本読んでみると、盗塁こそが機動力という単純な理解が大きな勘違いであるとよくわかります。
高校野球でここまで緻密な考え方を持ってチームを作り上げる人物がいたことに驚きました。
残念ながら、今年はベスト16で秋田商業に敗れてしまいましたが、
健大高崎これにありという実力をしっかり見せてくれたと思います。
これは現役の選手はもちろん、指導者の人、ファンの人も読んでもおもわずうなってしまう部分が多いです。
起動破壊の真髄を知った上で観戦するとなお楽しみが増えます。
高校野球の技術の向上がすごいですが、ホントにすげーなーと感心してしまいました。